幼稚園のお昼
昭和30年後半に幼稚園通っていたが、思い出はあまり良いものがない。
早生まれの私は、何をするのもうまくできなかった。
幼稚園児の1年の違いは、相当な差があったのかもしれないが、原因は自分自身にあったのだと思う。
自分で何かする・・ということができなかった。
誰かに何かを言ってもらって、初めて私は動けた。
それは常に他人が声をかけてくれるのを待つということだ。
冬になるとみんな持ってきたお弁当箱をだるまストーブの周りに置いた。
温めるというよりは、ごはんが冷たくならないように、アルミのお弁当箱を置くのだ。
お昼になると食べ終わった子は次々に教室から飛び出して遊び回った。
私のほかにも遅い子が数人いて、いつも決まった顔で食べていた。
おまけに食べ終わる終盤に私はしょっちゅうお漏らしをしていた。
頭の中で何度も「せんせい・・せんせい・・」と繰り返すのだが、のどの奥から言葉が出せないのだ。
そうこうしているうちに、涙とともに足元にも水がしたたり落ちてしまう。
毎回幼稚園の着替えのズボンをはかされ、自分の汚しもの一式ビニール袋にいれられ、それをぶらさげて帰っていった。
毎日思っていた。
お弁当の前にお手洗いにいっておけばよかった。
食べている途中で、お手洗いにたてばよかった。
先生に言えばよかった。
毎日そう思っているのに、なぜか私はできなかった。
お手洗いにいこう~と誘ってくれる友達がいたら、お漏らししなかったのかな・・と今思ったりもするけど、そもそも友達になりたいと思われないような子だったのだと思う。