昭和30年代 我が家にはお風呂はなく、近所にあるお風呂屋さんに通っていた。
週に3回くらい通い、髪を洗うのは週に1回くらいだった。
うわっ!!汚ねっ・・って思うかもしれないが、そもそも毎日お風呂に入るって発想はない。
洗面器の中に石鹸とタオルと下着をいれるだけ。当時は髪はせっけんで洗ってた。男湯と女湯の間に両方を見渡せる番台があり、そこのおじさんやおばさんが座っていた。物心ついたときからお風呂屋さんはそういうとこだったので気にすることもなかった。
脱衣場にかごがおいてあり、持ってきた着替えと脱いだ服を一緒にいれた。
たたんで持ってきたものと、今脱いだ感は結構な違いがあり、これを間違えることはなかった。
家に体重計はないので、みんなお風呂屋さんで量っていた。
私は下着をつけていたが、身体を拭きながら裸のまま体重計にのるおばさんも結構いた。そして牛乳が苦手だったので、フルーツ牛乳やらコーヒー牛乳を飲んだ。
当時の家のそばのお風呂屋さんは、瓶の飲み物類しかなかったと思う。
帰るときは脱いだパンツを人差し指と親指の先っちょでつまんで洗面器にいれ持ち帰った。信じられないような話だが、パンツを毎日取り換えるという習慣はなかったと思う。
ある日、近所のお姉さんと一緒になったのだが、お姉さんは脱いだパンツをキレイにたたんで、手のひらにのせて大事そうに持って帰った。今まではいていたパンツを、当たり前のように、なんのためらいもなく触るお姉さんに、ただモノではないと尊敬の念をいだいた。いつか私も脱いだパンツをしっかり手に持って帰れるようになりたいとさえ思ったほどだ。
そのうち、中学生にあがる前に家にお風呂がついたが、お姉さんの域にたどりつくことは、私には出来ずじまいだった。